中小企業の海外輸出への挑戦

多品種生産とユニークな製品開発の必要性

日本の製造業の生産方式は、産業機械の発展、市場の要望の変化などにより、「単品種大量生産」から「多品種小ロット生産」へ、「在庫販売方式」から「受注生産方式」へ、大きく変わりました。そのため、日本国内では「売れ筋の商品づくり」から「ユニークな商品づくり」へ、「価格力競争」から「開発力競争」へと時代は変わってき始めています。ユニークな商品を同時に生産していく能力、つまり多品種生産方式の需要は、海外のマーケットにもニーズがあります。


単品種生産の輸出方法とディメリット

以前までの日本企業の輸出方法は、販売計画を立案し、売れる見込みのある商品を計画生産していました。生産した商品をコンテナで海外(例A国)へ輸出します。A国のB問屋(distributor)がA国の複数の小売店へ売りさばきます。つまり、売れ筋の既製品を単品種大量生産し、A国にて在庫を確保し、販売を行います。

この在庫販売の方法は、売れなかったときのリスクがあります。いわゆる不良在庫です。また、単品種の輸出になるので、商品の選択肢が狭まり、小売店が在庫のある商品をユーザーへ押し売りする可能性にもつながります。A国の小売店市場においても、A国内にて同じ商品を複数店で販売するので、競争が激化し、取り扱いづらい商品となります。また、特注や別注の注文を受けられない仕組みになります。


多品種生産の販売メリット

一方、現在の日本メーカーは受注生産が主流です。受注生産は必要なときに必要なモノを必要な場所にお届けします。そのため、各小売店はそれぞれのユーザーの意見をより尊重し、特注した商品を販売できます。ユーザーの要望にあわせてサイズ、色、機能をつけ、そのユーザーのためだけに生産する、世界に1つだけの特別な商品を販売できます。ユーザーもそこに付加価値を感じ、小売店も販売チャンスロスを減らせます。この方法は日本国内市場だけでなく、海外の市場においても日本メーカーが受注生産・多品種小ロット生産をし、納品することが可能です。

それでは、どのような方法で日本メーカーが海外の小売店と受注生産・多品種小ロット生産を行い、取引しているのでしょう。いくつか方法がありますので、短所と長所を交えて記述します。


多品種生産の輸出方法 その1(LCL)

1つ目はLCLです。フォワーダーと言われる輸出入専門業者に委託し、商品を輸出します。日本メーカーはA国のC小売店から要望のある1台のみをつくります。フォワーダーは他の荷物と混載し、1つのコンテナにまとめます。フォワーダーがすべての業務を代行してくれるので、非常に簡単で楽です。しかし、輸送コストが高くつきやすく、一般的に10㎥以上になるとコンテナを1つチャーターするほうが安くなります。

ちなみに日本の製造業者は納期管理や多品種小ロット生産に非常に卓越しております。私の認識では欧米の企業と比較すると日本の企業が3週間で生産するのに対し、欧米では6週間かかります。船で運搬し、現地まで1週間~2週間かかるとしても実は日本で作って欧米へ輸出したほうが早いのです。

多品種生産の輸出方法 その2(FCL数社)

2つ目はFCLを数社で行うことです。10㎥以上商品をそろえてコンテナを1つ借り切って輸出する方法です。
現在の日本メーカーは多品種小ロットで生産します。その利点を活かして、A国のC小売店が日本メーカーH、I、J、Kにそれぞれに商品を合計で10㎥以上になるよう発注します。それぞれの日本メーカーはZ集積場所へ商品を集め、Zが日本からC小売店までの輸出業務を行い、A国のC小売店まで届けます。C小売店は2~4週間に1回以上のペースで日本からA国へ商品を輸送できれば、A国のメーカーよりも納期が早く、すべて完全受注生産で注文を受けられるので、A国の各ユーザーに世界に一つだけの日本製の商品をお届けできるようになるのです。

多品種生産の輸出方法 その3(FCL1社)

3つ目はFCLを1社で行います。つまり1社で10㎥以上の商品を一回に取り扱うという方法です。たくさんの商材を生産しているメーカーであれば可能になる方法です。現状では、日本のOEM販売企業が主流で、このOEM販売企業が日本各地のOEM生産依頼先から商品を集め、A国のC小売店へ輸出するという方法をとります。OEMのように、販売企業と生産企業が異なる場合は、ユーザーの意見が反映されにくいというディメリットもあります。


日本の中小メーカーの強み

現在でも、単品種の商品を1コンテナに満載し、輸出する方法は多くみられます。しかし、この方法は、ユーザーが自分にあったデザイン、色、サイズ、機能などを妥協しながら探すようになり、小売店においても販売チャンスロスを作ってしまう恐れがあります。また、在庫負担もリスクになります。

日本の中小企業は大チャンス時代をむかております。産業機械の発展、インターネットやSNSの浸透、ロジスティクスの進歩、市場の要望の個性への変化、ビジネスの国際化、様々な要因が中小企業に追い風になってきています。受注生産をいかに効率よくして、模倣されにくいユニークな商品を開発し続けられるかが、日本メーカーの課題です。日本メーカーは、世界からもっと必要とされる企業になれるはずです。



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